「どうして穴の中に落ち込んでいたんだい?」
モノシルさんは、穴を覗きこみながら、聞きました。
どうして、穴に落ち込んでいたのか。
ヘナマメは考えました。
もう長いこと落ち込んでいたので、
どうしてだったのか、覚えていないのでした。
「なにか嫌なことがあったのかもしれないし、
周りのみんなが幸せで、
それはとても素敵なことなんだけれども、
自分には何もなくて、
まるで空っぽみたいに感じられて悲しくなったのかもしれない」
ヘナマメは、そう答えました。
すると、モノシルさんは、また聞きました。
「空っぽだと、なにか都合が悪いのかい?」
カラッボだと、なにか都合がわるいのかい?
ヘナマメは、また考えました。
「幸せなものを、たくさん持っている方が、幸せだと思うから。
からっぽだと、見せることも出来ないよ。」
すると、モノシルさんは、また聞きました。
「ほんとうに、たくさん持っている方が幸せかい?
見せるものがないと、なにか困るのかい?」
ヘナマメは考え込んでしまいました。
それに、なんでそんな風に聞くんだと、ちょっと腹を立てていました。
モノシルさんは、そんなヘナマメをまっすぐ見て言いました。
「わたしは、知りたいんだ。ほんとうに、そうなのかどうか。
ただ、シンプルにそれだけなんだよ。」
ヘナマメは、ほんとうにそうなのかどうか、考えて言いました。
「だって、この穴をみてごらんよ。
ここには空っぽで、なにもないんだよ。
こんなに、つまらないことなんてないよ。」
そして、2人で穴を覗き込みました。
つづく。
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